港町の小さなコミュニティFM局「なぎさFM」は、再開発による移転を控えながら、町の一大イベントである港町音楽祭の準備に追われていた。元的ディレクターの風間澪は、かつてテレビ業界助手として働いていたが、三年前に仕事のことをまるっきり放棄して港に戻り、今は古いスタジオや資料室の整理、音楽祭の公演生放送を任されている。
ある雨上がりの明け方、澪は第2スタジオの棚に残された「水曜深夜便」のカセットテープを見つける。ラベルには「澪の声から消えている曲」と書かれており、そのテープの声が鳴り止むと、十七分の無音が続く。耳を澄ませると、その無音の中では放送ジャンプが灯し、局長の古い白い灯子がそのテープを見た瞬間、表情が硬張る。澪は、幼い頃に祖父の時計修理店を営む祖父の老人から、二十年前の録音に残る違和感を追い始める。
市民ホールで開かれた音楽祭の打ち合わせで、市役所広報課の小此木蓬が「旧なぎさFMの公開生放送再録」を提案する。音楽祭実行委員(の大概荘)の会議室の空気が一変する。生放送送出の三層現場、外部音響技師の大概、地元記者の尾上沙季もその反応に違和感を覚える。二十年前に失踪した高校生DJ・南宮修人の名が、町の記録から不自然に消えていることが、また一つ少しずつ浮かび上がってくる。
澪は、母・奈津が営む惣菜店で南宮の名前を出すと、奈津は知らないと答えながらも、父の遺品に繋がる青い鍵の在処を澪に示す。仕出し下から見つかった鍵と録音メモには「音を先に信じる心、声は、都会より確かく聞こえる」と書かれており、見知らしい言葉が残されていた。澪は、頼もしいが謎の多い修に手がかりをたどりながら、いなかった若手技師の声で「十七分以降は注きた。澪が眠れ」と記録され、別の男の人の声が「だから知ること。音楽院は成功したことにする」と応じ、さらに少年の声が「まだ鍵が戻ってない」と訴えていた。
■ イントロダクション
地方の小さなコミュニティFM局を舞台に、二十年前の失踪事件と忘れられたテープの謎を追う元ディレクターの物語。失われた「十七分の無音」が、静かに消えた記憶と真実への扉を開く。
■ 世界観
舞台:地方港町コミュニティFM局「なぎさFM」周辺。時代:現代(回想含む)。トーン:静寂と音の狭間に漂う郷愁と緊張感。
■ 主な登場人物
風間澪(31)元TV助手、現FM局員。朝倉航(31)FM技術担当。白井灯子(46)FM局長。小此木蓬(29)市役所広報課員。
■ ストーリー概要
再開発前夜のFM局で、澪が二十年前の未放送テープを発見。十七分の無音に隠された真実が、失踪したDJの秘密と町全体の記憶に波紋を広げていく。
■ 第一幕:発見
雨上がりの夜明け。澪はスタジオの整理中に「水曜深夜便」と書かれた古いカセットテープを発見する。再生すると十七分の無音が続き、その後に複数の声が録音されていた。
■ 第二幕:調査
澪は音楽祭の準備をしながら、失踪したDJ・南宮修人の足跡を追う。市役所の記録、旧放送素材、証言が少しずつ繋がり始める。
■ 第三幕:対峙
テープに録音された声の主が判明。過去の隠蔽と現在の音楽祭が交差する中、澪は父の遺品に残された鍵の意味に辿り着く。
■ エンディング案
音楽祭の生放送に乗せて、失われた音声が町全体に届く。静かだった記憶が、音と共に甦る。